2011年8月27日 陸前高田市復興街づくり 〜街おこし・夢おこし〜
@陸前高田市立高田小学校 校庭(岩手)

・演奏曲目

大丈夫だよ
見えない翼
My Love
旅立ちの日に・・・
カケラ

・レポートその1(ひいらぎさん)

私は、いつも通りの気持ちで、
その場所に赴いていた。
一ノ関から車で約一時間半、
綺麗な山道を、軽快に走り続けていた。

間もなく到着という時、
風景が、一変した。

大きな瓦礫の山がいくつも散在し、
遠く、海が見えていた。

そこには、
あるはずの町の姿が、
一切、存在しなかった。

そこに建物があったという、
区画の痕跡だけが、存在していた。



私が見ている地図には、
その先に砂浜があり、
綺麗な松林が並んでいたという。

今、私の視界の先には、
ただ静かな海だけが広がっていた。



ゆるやかな高みにある家も、
屋根が崩れ、外壁もなく、
部屋がむき出しとなったまま、
未だ、そのまま残されていた。

骨組みだけのスーパーマーケットは、
その中腹から、背景の海が見透せていた。

それらの、本来あるべきではない光景は、
少し私を不安にさせた。



例えば、
私は、広島の平和記念公園に赴く度に、
そこに掲げられている、
すべてをなぎ倒された当時の街の風景写真を、
眺め、想いを馳せる。

人の力を簡単に凌駕してゆく、
大きな大きな力が、そこにあった。


今、私は、そういった光景を、
目の当たりにしていた。


あの日の津波は、
びっくりするくらいの距離まで到達していた。


あるはずの町の姿を、
今日、私は見ることが出来なかった。


それでも、
残酷なくらい、空は青く澄み渡り、
山の緑は気持ちいいくらい鮮やかで、
広がる海は、穏やかに、青く光り輝いていた。





陸前高田市立高田小学校
土埃舞う道の、ゆるやかな登り坂、
小高い丘の上に、その小学校はあった。
そこには、沢山の人が集まっていた。
その活気は、私を安心させてくれた。

大丈夫

人の生きてゆく先には、
いつでも希望があり、未来がある、はずだ。


全国各地の飲食ブースが、美味しそうな香りをたて、
集まった人たちも賑わいをみせていた。
体育館では、震災前後の町の風景写真が展示され、
ステージでは、
太鼓の演奏や吹奏楽、ディスカッションなどが行われていた。
校庭が一杯になるほど、人が集まっていた。




川嶋さんの登場で、
「可愛い〜っ」と声があがる。
それが嬉しい。
でも本当に、そんな感じだった。
真っ白なステージに立つ、清楚な川嶋さん、
切り取っておきたいくらい、鮮やかなシーンだった。

「こんにちは、川嶋あいです。」
「暑いですね〜っ」
「本当に天気が良くて、良かったです。」

「3月11日、日本中が大きな悲しみみ包まれましたが、」
「今、少しずつ、優しさの連鎖が広がっています。」
「絶対に忘れてはいけない悲しみの先に、」
「希望の光が灯され始めた今、聴いて欲しい歌があります。」

今日は、とにかく大音量で響いていた。
川嶋さんの奏でるキーボードに重なり、
長澤さんのアコースティックの調べも、
弦を弾く一つ一つまで、はっきりと聴こえる。
川嶋さんの歌声も、とても力強かった。
それも、良かったのかもしれない。

大丈夫だよ

どうして川嶋さんが、大丈夫だよ、と歌い続けるのか、
なんだか今日は、ちょっとわかった気がした。
まだまだ、それが、必要なんだと。


「この陸前高田は、私がとても来たかった場所です。」
「そして、歌いたかった場所です。」
「まだまだ震災の爪あとが色濃く残ってますが、」
「陸前高田は、元気なんだよって、世界中に伝えられるように、」
「少しでもお手伝い出来たら嬉しいです。」

「それでは、元気を出して、楽しんじゃいましょう。」
「陸前高田、盛り上がってますか〜っ!」

見えない翼
My Love

柔らかい風が川嶋さんの衣装をなびかせ、
ずっと笑顔で、
それはまぶしい日差し以上の輝きを放っていた。

なんで川嶋さんが、元気を出していこう、と言い続けているのか、
なんだか今日は、わかった気がした。
今、それが、本当に必要だから。


果てしなく美しい「旅立ちの日に…」を聴きながら、
大音量の「カケラ」に壮大な想いを馳せながら、
私は今日ここで川嶋さんの歌を聴けて、
その歌う姿を感じられて、
本当に良かったと思った。

”絶え間なく 世界の果てまで”
”優しく 鮮明に 響き渡るように”
”どうか 届くように”


「私は、震災後、自分に出来ることをしたいと思って、路上ライブを再開しました。」
「ある女子高生から、”微力だけど無力じゃない”っていう言葉をもらって、」
「今は、それを支えに頑張ってます。」

「みなさん、これまで、ものすごく頑張ってこられたと思います。」

「まずは私たちが、元気に活動していかないといけないなって思ってます。」


私は、また何度も、
今日見た光景を思い返すだろう。

その時また、
何かを感じられるかもしれない。




陸前高田の夜には、
灯りがなかった。

周囲には、
暗闇だけが存在していた。

打ち上げられた花火は、
ただただ美しく夜空に輝いていた。




今日の鮮やかな川嶋さん、
素敵だったな。

川嶋さんは、陸前高田で暮らす人たちを元気づけていたけれど、
そんな川嶋さんに、私が元気をもらっていた。

それで、いいのかもしれないな。


川嶋さんは、一つの希望だから。



来て良かった。

ありがとう。

(2012.08.22掲載)